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蓬莱-寿ぎの文様-

開催期間:令和2年/2020年1月1日(水・祝)~1月26日(日)

 蓬莱(ほうらい)は、古代中国の神仙思想で説かれた仙境の一つです。遙か東方、渤海(ぼっかい)の海上にあると伝えられ、方丈(ほうじょう)、瀛州(えいしゅう)とともに三神山と呼ばれてきました。前漢時代、司馬遷(しばせん)が著した『史記(しき)』には、蓬莱には仙人が住み、不老不死の薬があり、鳥獣は尽(ことごと)く白く、黄金や白銀の宮殿がそびえ立ち、遠くから見ると雲のように見え、近くから見ると海中にあり、人が近づくと大風が吹いて舟を引き返させると記されています。後には、根をもたない島であるために亀によって支えられているという言説も加えられました。そのため蓬莱の姿は、波打つ大海原にそびえる岩山、あるいは亀の背に乗る岩島の上に、楼閣や仙人、鳥獣というモチーフを組み合わせて表現されてきました。
蓬莱伝説は早くから日本に伝えられ、不老不死や延命長寿を叶える理想郷として人々を魅了しました。平安時代に成立した『竹取物語』においては、蓬莱の玉の枝が得難い宝物として描かれ、同じく平安時代に著された『紫式部日記』や『御堂関白記(みどうかんぱくき)』などには、蓬莱を象った作りものの台が祝宴の飾りや婚礼の祝儀物として用いられる様子が記されています。これらの記録から、平安時代、蓬莱は単なる仙境ではなく、風流や吉祥を象徴する存在となっていたと考えられます。それを反映するかのように、この時代以降、様々な美術工芸品の意匠として蓬莱が表現されるようになりました。
当初、蓬莱意匠の多くは、水上の岩山に長寿を象徴する常緑の松と、同じく長寿を象徴する鶴亀を配した姿で表されました。この表現はさらに展開し、鎌倉時代には竹、室町時代には梅が加えられ、鶴亀と松竹梅という、現代につながる吉祥尽くしの意匠へと変化を遂げました。いつしか水上の岩山という表現も装飾的な流水や洲浜に置き換えられ、江戸時代に到り、蓬莱は典型的な吉祥の画題として、あるいは婚礼調度などの調度品を飾る吉祥文様として表されるようになり、より多くの人に親しまれるようになります。
本展では、理想郷としての蓬莱を描いた絵画や、蓬莱文様が表された調度品など、蓬莱にまつわる種々の作品を紹介します。新年を寿ぐにふさわしい吉祥の気分に満ちた蓬莱の世界を、どうぞご堪能ください。

 

▼側次 紺地波に仙島文様(そばつぎ こんじなみにせんとうもんよう) 1領
 江戸時代(裂は中国・清時代)
 当館蔵(井伊家伝来資料)

 

▼小笠原家五節句床飾図(おがさわらけごせっくとこかざりず) 1冊
 江戸時代 延宝5年(1677)成立、文化5年(1818)写
 当館蔵(井伊家伝来資料)

 

▼蓬莱文円鏡・若松に橘紋鏡箱
(ほうらいもんまるかがみ・わかまつにたちばなもんかがみばこ) 1式
 江戸時代
 当館蔵(井伊家伝来資料)

 

▼蓬莱文華葩(ほうらいもんけは) 17枚のうち1枚
 江戸時代
 当館蔵(井伊家伝来資料)

 

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名称
蓬莱-寿ぎの文様-
会期
令和2年/2020年1月1日(水・祝)~1月26日(日)
休館日
会期中無休
開館時間
午前8時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
入場料
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