彦根城表御殿は、彦根藩の政庁と藩主の住まいを兼ねた建物で、「表(おもて)」の空間では藩士が登城して政務や対面儀礼を行い、「奥向き(おくむき)」には藩主が住んでいました。
江戸時代初期、彦根城建設の2期工事(1615年~1622年頃)の中で建てられ、明治初期に取り壊されるまで、彦根藩政の中核として機能していました。
表御殿が明治時代に取り壊された後、跡地はグラウンドとなっていましたが、昭和50年代頃、表御殿の復元建築と資料を保存・展示する「博物館」の機能を兼ね備えた建物を建設しようという機運が高まり、調査が進められました。
発掘調査で建物の跡を確認し、絵図や古写真などの資料も調査し、資料に基づいた正確な復元をめざしました。
起こし絵図
表御殿御庭図
ただ、文化遺産を展示・保存する施設は耐火構造とする必要があったため、展示・収蔵スペースは鉄筋コンクリート造で外観を復元し、藩主の居室であった「奥向き」空間は、伝統的な木造建築で昔ながらに再現しました。奥向きに面して造られた庭園は、発掘調査により発見されたものです。この遺構や古絵図に描かれた樹木・燈籠(とうろう)・手洗鉢(ちょうずばち)なども再現しています。
このような工夫により、表御殿は博物館という新しい機能を備えた施設として現代によみがえったのです。
御座之御間