『彦根藩井伊家文書』(彦根城博物館所蔵、全27,800点)は、徳川譜代筆頭大名の井伊家に伝来した古文書で、江戸時代の幕府や大名の様子を知ることができる一級史料として国の重要文化財に指定されています。それらのうち、約5,000点を「老中奉書(ろうじゅうほうしょ)」が占めています。
老中奉書とは、江戸幕府老中から大名へ宛てた公文書で、そのほとんどが大名と将軍の間で定期的に交わされた儀礼的な献上や挨拶の中で作成されたものです。井伊家に宛てられた老中奉書は江戸時代中期から約150年分がほとんど全て残っており、他の大名家に現存する老中奉書と比較しても最大級の数量といえます。しかしそのうち約1,000点が水害に遭うなどして損傷が激しかったことから、平成10年度から継続して保存修理を実施してきました。
このたび、老中奉書全点の修理が完了したことから、その修理成果を報告書として刊行します。本報告書の刊行により、老中奉書の全容が明らかとなり、ひいては彦根藩政の調査研究の進展が期待されます。