「天(てん)の美禄(びろく)」とは、酒を天からのありがたい賜り物とし、そのすばらしさをほめたたえる言葉です。
酒は、古くは神や霊と人とが交感することを可能とする特殊な霊水と考えられ、酒のもたらす精神の昂揚や弛緩の作用が人を非日常の境地へと誘い、文学、芸能、美術など、豊かな文化を生み出す場を連綿と提供し続けてきました。
例えば、酒が欠かせない饗宴において詩歌が披露され、場を彩る室礼に意が注がれました。酒の道具そのものも、酒を注ぐ銚子や徳利、直接口にする盃、盃を載せるための盃台、盃を濯ぐために水を入れておく盃洗など、多様な種類が作り出され、そのひとつひとつに趣向が凝らされ、見る者を魅了します。酒を楽しむ人々をテーマにした画もしばしば描かれ、酒の徳を称える祝言の意が込められた能「猩々(しょうじょう)」も生み出されました。
本テーマ展では、賑やかな遊宴の様を描いた絵画やそこで創作された詩文、酒を主題とする能の演目の能面・能装束、色鮮やかな酒器など、酒にまつわる品々で新春を寿ぎます。酒が生み出す豊かな世界をご堪能ください。
四季遊図
能面 猩々
朱漆塗養老滝図蒔絵大盃
湖東焼 赤絵金彩飲中八仙図馬上盃 幸斎絵付