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能を彩る道具―小道具と作り物―

開催期間:令和4年/2022年6月23日(木)~7月20日(水)

 能において、扇の一種である中啓(ちゅうけい)をはじめとする小道具や舞台に据える作り物は、上演に欠くことができない重要な道具です。面(おもて)や装束に比べて注目されることは少ないものの、演目の内容や登場人物の役柄を象徴し、演出の上でも重要な役割を果たします。
 小道具と作り物に関する最も古い記録は、能の大成者である世阿弥(ぜあみ、1363~1443)の著作です。現在も使用される小道具と作り物の名が見え、能の草創期からこれらが用いられていたことが分かります。
 作り物は、演劇における大道具にあたります。上演のたびに作製し、上演後は解体することを原則とし、主なものとして山、木、小屋、舟のほか鏡台などがあげられます。竹と木の枝、布を主な材料とし、その造形も他の演劇の大道具に比べて至極シンプルである点が特徴で、物語の情景を表現し、場面転換などの役割も担います。対して小道具は、役者が手に持ったり、身に着けたりして使う道具です。あらかじめ作製・保管するものと、作り物と同じく上演ごとに作るものとがあり、最も基本的な道具である中啓から、冠や烏帽子(えぼし)、太刀、杖、あるいは仏具の鉦鼓(しょうご)、糸を繰(く)る道具である枠枷輪(わくかせわ)、さらには妖怪が放つ蜘蛛の糸まで、その種類は多岐に渡ります。登場人物の役柄を表す上演に不可欠な道具であり、時に物語の見せ場となる演技にも使われます。これらを用いることで、舞台に趣が添えられ、また物語を展開させる様々な演出がなされるのです。
 井伊家伝来の能道具は、面と装束のほとんどの種類を網羅し、さらには主要な小道具、作り物用の道具までも備えた大揃いのコレクションです。そのほとんどが、生涯を能に捧げ、自ら舞台に立った井伊家15代直忠(なおただ、1881~1947)によって収集、発注されたもので、直忠自身がこれらを使って様々な役柄を演じました。
本展は、これら井伊家伝来の能道具や作り物図などを通して、小道具と作り物の特徴や種類、舞台上での役割などを紹介する展示です。特に大胆な演出で知られ、作り物と小道具を用いた演出の妙が光る「道成寺(どうじょうじ)」を取り上げるほか、それぞれの道具を用いる演目の内容もあわせて解説します。能を彩る小道具や作り物の造形はもちろん、その巧みな演出効果にも注目して御覧ください。

スライドトーク

 

【主な展示資料】

▼作り物控
縦 24.2㎝ 横 16.6㎝
明治~昭和時代初期

「枕慈童」の作り物図

 

 

 

作り物と小道具の色に関する直忠のメモ

 

 

 

 

 

 

▼夕顔
横(最大) 54.9㎝
大正~昭和時代初期

「半蔀」の小屋に使う夕顔の蔓と瓢箪

「半蔀(はしとみ)」の小屋の作り物図

 

 

 

 

 

 

 

▼天冠(てんがん)
総高 24.5㎝ 径 14.5㎝
大正15年(1926)

天冠

 

 

 

 

 

 

 

 

▼中啓 金地松に日出図(きんじまつにひのでず)
縦(最大) 35.5㎝
江戸時代後期

金地松に日出図

 

 

 

 

 

 

 

▼中啓 白地芭蕉図(しろじばしょうず)
縦(最大) 34.6㎝
大正~昭和時代初期

白地芭蕉図

 

 

 

 

 

 

 

▼能道具図式
縦 13.5㎝ 横 19.8㎝
明治~昭和時代初期

能道具図式

 

 

 

 

名称
能を彩る道具―小道具と作り物―
会期
令和4年/2022年6月23日(木)~7月20日(水)
休館日
会期中無休
開館時間
午前8時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
入場料
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展示作品リスト


主な展示作品

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