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中国故事人物の姿
-三国志の諸葛孔明から詩聖李白まで-

開催期間:平成29年/2017年1月1日(日)~2月11日(土)

日本は古来より、文学や美術、芸能など、あらゆる分野で中国文化の影響を強く受けてきました。日本の美術作品を見渡すと、中国の風景や人物、文物などをテーマとしたものが数多く見受けられます。その中でも、今回は特に中国故事人物に着目して紹介します。構成は、「1.神・仙人」「2.武人など」「3.僧・高士」の3部とします。

1では、寿老人(じゅろうじん)や鍾馗(しょうき)、西王母(せいおうぼ)など、神や仙人を紹介します。神と仙人の境界は曖昧で、日本で成立した七福神にも取り込まれるなど、なじみ深い者が含まれます。

2では、劉備(りゅうび)や関羽(かんう)などの「三国志」の登場人物も取り上げます。三国志を読み物風にした通俗小説「三国志演義」は、江戸時代の日本で多くの読者を獲得しました。現代でも、これをもととした小説や映画、漫画などが制作されるなど、その流れは脈々と受け継がれています。

3では、布袋(ほてい)や寒山拾得(かんざんじっとく)などの世俗を超越した禅僧や、俗世間を離れた場で生活し、詩を作り、楽器を奏で、学問や芸術などの清談に耽るなど、世間の評価や地位を気にかけない高潔な精神をもつ高士をテーマとします。陶淵明(とうえんめい)や李白(りはく)、林和靖(りんなせい)などの極めて高名な詩人が中心となります。

人物を特定する要素となるものは、姿形、一緒に描かれた動植物や景色、登場人物の合計人数など、実に多様です。一瞬にして特定できる作品が多いのは、それだけ中国故事が私たちにとって身近な存在となっている証左と言えます。これらの画を飾る時、時に吉祥の意を見出し、時に憧憬の念を抱き、そして時には悠久の歴史に思いを馳せることでしょう。新たな年を迎え、脈々と続いてきた豊かな文化を改めて再確認し、ご堪能ください。

ギャラリートークの開催

【主な展示作品】

▼ 鍾馗図(しょうきず) 狩野永岳(かのうえいがく)筆 当館蔵
鍾馗は、唐の玄宗(げんそう)皇帝が病になったときに夢に現れ、魔を祓(はら)って病を治したということから、邪気を祓う神と信じられるようになったといいます。中国では古くに、鍾馗像を年末年始に掛けて邪気を祓うという習慣が起こり、後世、それは5月5日の行事へと変わっていきました。
鍾馗の定番の姿は、巨眼多髭、黒の冠をかぶり、長靴を履き、手には鞘(さや)から抜いた剣。小鬼をつかみ取る場合もあります。

▼能装束 黒地垣に桃と唐団扇(とううちわ)文様厚板唐織(あついたからおり) 当館蔵
黒地に金糸で檜垣(ひがき)文様をあらわし、その上に桃の花と実、唐団扇をあらわす能装束。唐団扇は、能においては中国人物の役専用の小道具で、桃との組み合わせで西王母(せいおうぼ)の存在を連想させます。西王母は中国の仙女で、三千年に一度だけ実を結び、それを食すると長寿あるいは不老となるという桃を漢の武帝に与えるという伝説があります。このように、人物そのものはあえて表さず、関連する物で象徴的に表す文様を「留守文様(模様)」と言います。

 

 

▼蔡文姫帰漢図(さいぶんききかんず) 張月樵(ちょうげっしょう)筆 当館蔵
後漢の才女、蔡文姫(162?-229?)が、天下の混乱の中、騎兵にさらわれて南匈奴(みなみきょうど)の左賢王(さけんおう)の妻にさせられ、後、亡き父と親しかった武将の曹操(そうそう)(後の武帝)によって助けられ、晴れて帰郷することができたものの、子は置き去りになったという故事を絵画化したもの。この故事は、『三国志』にも登場するものです。写真の部分は、蔡文姫が漢に帰郷する場面と考えられます。馬上の女性が蔡文姫と見られ、出立の悲哀をあらわしているのか、その馬にすがって涙する女性をはじめ、悲しそうな表情の人々の姿が見えます。作者は、彦根出身で、京に出て後に名古屋で活躍した張月樵(しょう)(1772[1765とも]-1832)。

▼ 東坡画冊(とうばがさつ) 富岡鉄斎(とみおかてっさい)筆 個人蔵

中国・北宋の詩人蘇軾(そしょく)(東坡は号 1036-1101)の事績計12場面を描いたもの。写真の場面は、蘇軾がかねて見たいと思っていた登州の名物の海市(かいし)(蜃気楼(しんきろう))が見られるよう祈ったところ、翌朝に見ることが叶い、これは海神の恵みの賜と深く感謝し、七言古詩を作って感謝の意を述べたという場面を描いてます。
富岡鉄斎(1837-1924)は、明治~大正期の南画家・儒者。東坡に強く共鳴し、その詩文伝記から数多く取材して作品を制作しています。

 

▼虎渓三笑図六角徳利(こけいさんしょうずろっかくどっくり)
床山(とこやま)絵付 当館蔵

晋代の僧慧遠(えおん)(334-416)は、俗界を離れる誓いをたて、廬山(ろざん)東林寺(とうりんじ)に居を構えました。客人の道士陸修静(りくしゅうせい)(406-477)と、儒者かつ詩人の陶淵明(とうえんめい)(365-427)の2人を送る際、談義に熱中のあまり、誓いを破って結界となる虎渓(こけい)を過ぎてしまい、虎の鳴き声で気づいて3人で大笑いしたといいます。
この故事に取材した「虎渓三笑図」は、儒教と道教、仏教が融合化する唐代以降の中国でよく描かれ、日本でも鎌倉時代末期以降、好んで描かれました。
本作は、江戸時代後期に彦根で焼かれた湖東焼で、絵付は、もと彦根藩の足軽で、中山道筋の原村で絵付師として活躍した床山によります。

名称
中国故事人物の姿
-三国志の諸葛孔明から詩聖李白まで-
会期
平成29年/2017年1月1日(日)~2月11日(土)
休館日
会期中無休
開館時間
午前8時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
入場料
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展示作品リスト


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