井伊家13代当主直弼(1815~1860)は、若い頃に、親しく付き合い信頼を置いた人に宛てて、しばしば自らの感情を率直に書き綴った手紙を送っています。直弼の手紙は、当館が所蔵する彦根藩井伊家文書や旧彦根藩士の家の古文書のなかに300通以上確認されており、直弼の心情や考え方が分かる史料として、これまでも当館では力を入れて研究し、広く紹介をしてきました。
井伊直弼は文化12年(1815)に生まれ、青年期は彦根城下の尾末町屋敷(おすえまちやしき)(埋木舎(うもれぎのや))で暮らしました。その頃は、取り組んでいた文武諸芸や日々の出来事について、親しい藩士や親戚に手紙で伝えていました。弘化3年(1846)、32歳で世継ぎとなり、江戸に移った後は、藩の活動に関することもよく話題としました。これらの中で、悲しみや喜び、落胆、怒りなどの気持ちを記していました。
このような直弼の手紙は長文となることが多く、そこには心情を表す言葉が何度も繰り返され、また、直弼が直面した事態の経過をも詳細に書き綴っています。親しい人に心の小さな動きまで伝えることで自分のことをしっかりと理解してもらいたい、という直弼の思いが現れていると見られます。
さまざまな事態に対して直弼がどう感じたのか、手紙の詳細な書きぶりから直弼自身の言葉で知ることができます。本展では、これらの手紙を通じて、直弼の人物像に迫ります。
◆主な展示資料◆
▼井伊直弼書状 三浦十左衛門・大鳥居彦六宛(一部)(当館蔵)
▼井伊直弼書状 長野義言宛(一部)(当館蔵)
関連講座「井伊直弼の手紙を読む」の開催
日 時:令和元年(2019年)6月29日(土) 午後2時~3時30分
場 所:当館講堂
資料代:100円
定 員:60名(当日受付、先着順)
担 当:早川駿治(当館学芸員)