狩野永岳(かのう えいがく 1790-1867)は、桃山時代の狩野の高弟、狩野山楽(1559-1635)を祖とする家の第9代で、幕末の京を中心に活躍した絵師です。京狩野家は、江戸時代中期以降は特筆すべき活躍が見られませんでしたが、幕末の永岳の登場により再び隆盛を誇る機会を得ました。
京狩野家の画業の基本は、朝廷や宮家、公家の九条家、京の寺院等の御用でしたが、永岳の代には大名家の彦根藩家の御用もつとめ、さらには富商や富農層にまで広く受け入れられました。
卓越した画力を備えた永岳は、幕末の京都画壇の雄としてその名を知らしめます。江戸時代後期の画壇は、各家のお家芸の画風に止まらず、多様な画風でもって需要に応えていました。永岳もまた、初代山楽、2代の代に遡る桃山風の華麗な画風を継承しながら、当時流行していた四条派や岸派、文人画派、復古大和絵派など、あらゆる画風を積極的に採り入れて自家薬籠中のものとしています。安政3年(1856)に発行された『平安画家評判記』では、「大先生は何にてもしっかりとお見事に出来ます」と評されました。
当館は、永岳が彦根藩御用をつとめていたことから、永岳作品を収集の対象としています。本展示では、本年購入した永岳筆の山水人物図屏風のお披露目を兼ねて、当館が収蔵する永岳作品の中から11件と関連資料1件を紹介いたします。選定にあたっては、永岳が多様な作品を手がけていたことが分かるラインナップとしました。永岳の高い画技と、自在に変化させる筆さばきをご堪能ください。
【主な展示資料】
▼井伊直弼画像 狩野永岳筆 1幅
絹本著色
縦105.5㎝ 横41.2㎝
当館蔵(井伊家伝来資料)
新収蔵資料
▼山水人物図 狩野永岳筆 6曲1隻
紙本墨画
縦161.4㎝ 横362.6㎝
江戸時代後期
当館蔵
▼天橋立図 狩野永岳筆 6曲1隻
紙本著色
縦153.0㎝ 横355.2㎝
個人蔵
▼鍾馗図 狩野永岳筆 1幅
紙本墨画
縦128.1㎝ 横55.4㎝
当館蔵