毎年特定の日時に行われる年中行事は、江戸時代には現在よりも盛んに行われていました。彦根藩においても、藩主や藩士の日々の暮らしのなかに見られるほか、藩士が勢揃いするような行事もしばしば行われました。これらには、現代と同じような慣習もあれば、大きく違うものもありました。
例えば、正月に雑煮を食べたり、鏡餅を飾ったりすることは、現在でも江戸時代でも共通しています。ただ、全く同じということはなく、江戸時代には武家に特徴的なものとして、具足飾(ぐそくかざり)という正月飾があり、甲冑とともに鏡餅も飾られていました。鏡餅は彦根城表御殿にいくつも飾られましたが、具足飾の鏡餅が最も重要なものとして扱われました。
正月にはまた、彦根藩士が惣出仕(そうしゅっし)し表御殿で藩主にお目見えする対面儀礼が行われていました。上級の藩士は表御殿の書院で藩主から盃を賜り、下級の藩士は、大広間などに勢揃いしてお目見えをしています。年始の対面は、彦根藩にとって正月の主要な行事でした。
正月以外にも彦根藩では、五節句や盂蘭盆(うらぼん、7月15日ごろ)、月見(8月15日および9月13日)、煤(すす)払い(12月13日)などさまざまな年中行事が行われています。上巳(じょうし、3月3日)や端午(たんご、5月5日)等の節句では、正月同様に藩士の惣出仕がありました。一方、月見では大規模な儀式は行わず、月見そのものを楽しんだり、贈答が行われたりしていました。
本展では、かつて彦根藩で行われた正月行事の様子をはじめ、彦根藩の年中行事を紹介します。
【主な展示資料】
▼年中御定例御祝留
縦25.0㎝ 横17.0㎝
江戸時代後期
▼黒漆塗橘紋蒔絵膳椀類
文久2年(1862)11月
▼側役日記
縦29.6㎝ 横20.8㎝
宝暦7年(1757)
▼年中行事留書
縦24.0㎝ 横17.0㎝
江戸時代
個人蔵(岡本半右衛門家文書)
▼側役日記
縦28.6㎝ 横20.1㎝
明和7年(1770)
▼御膳方日記
縦12.0㎝ 横34.0㎝
明治4年(1871)