展覧会

国宝・彦根屛風

開催期間:令和6年/2024年4月25日(木)~5月14日(火)

 当館所蔵の風俗図(彦根屛風(ひこねびょうぶ))は、近世初期風俗画の傑作として高く評価され、国宝に指定されています。「彦根屛風」の名は、代々彦根藩主であった井伊家に伝来したことによる命名で、一般に広くこの名で知られています。近年、井伊家12代の直亮(なおあき、1794-1850)が購入したことが明らかになりました。
 この屛風の制作は、江戸時代初期の寛永年間(1624-44)頃と考えられており、舞台は、当時の京の遊里(ゆうり)と推定されています。各人物は、屛風の山折りと谷折りの形態を活かし、それぞれが緊密な対応関係にあり、そのさまざまな姿態とともに、計算し尽くした完成度の高い構図がとられています。また、人物の髪や衣装の文様等、線描と賦彩は精緻を極め、器物や衣装の質感までもが表現され、生々しいまでの印象を与えます。そして、三味線、双六、恋文、画中画の屛風絵は、漢画の伝統的画題である琴棋書画(きんきしょが)の見立てと解され、屛風絵は室町時代の本格的な漢画の技法で描かれるなど、単純な風俗画を超えた、重層的な要素が随所に盛り込まれています。勿論、小袖や唐輪髷(からわまげ)などの装いや種々の遊びなど、江戸時代初期の風俗をリアルに表現する点でも高く評価されています。
 このように、多様な魅力を持つ屛風ですが、画中に落款(らっかん)はなく、作者は特定されるに至っていません。現在は、卓越した素養と手腕を持つ狩野派の絵師の手になると考えられています。
 本展は、来館者の多いゴールデンウィークを含めた期間、彦根の誇る名宝、彦根屛風を公開し、その魅力を堪能していただこうとするものです。併せて、彦根屛風の影響のもとに描かれた作品1件を展示します。

スライドトーク

 

▼展示作品

1 風俗図(彦根屛風)

国宝
本紙(絵が描かれている部分):縦94.0㎝ 横271.0㎝
江戸時代 寛永年間(1624-44)頃


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2 風俗図

柴田是真(しばたぜしん)筆
本紙(絵が描かれている部分):縦 103.6㎝ 横 41.0㎝
明治時代
個人蔵

 彦根屛風中の一部の人物と器物を選択して再構成した掛幅の画。人物のポーズや器物の形は原本と同一ですが、小袖の色や文様、帯、髪型、表情、脇息や煙草道具の装飾等、細部はかなり異っており、原本を緻密に摸写しようとしたのではなく、翻案作品(アレンジ作品)として描かれたものです。
 作者は、幕末から明治中期にかけて活躍した蒔絵師であり絵師でもあった柴田是真(1807-91)。その半生をまとめた「是真点描」(1938)に拠ると、是真は、若い時分に江戸麹町の商人のもとにあった彦根屛風に感じて模写を願い出ましたが容易に受け入れられず、帰宅後に記憶だけをもとに描いて店主に見せたところ、その出来に驚かれたといいます。是真は後に、彦根屛風に着想を得た作品を多く世に送り出しました。本作もそのうちの一つで、蒔絵師としても名を成した是真らしく、一筆一筆が安定した筆致で、賦彩も綿密で隙がありません。
 江戸時代以来、彦根屛風の摸写や翻案作品は数多く制作されました。彦根屛風の評価の高さ、後世への影響力を示す証左と言えます。

名称
国宝・彦根屛風
会期
令和6年/2024年4月25日(木)~5月14日(火)
休館日
会期中無休
開館時間
午前8時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
入場料
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主な展示作品

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