抹茶を点てて客をもてなす茶の湯は室町時代に源流を持ち、江戸時代には、大名を中心に広まりました。彦根藩井伊家でも歴代当主が茶の湯をたしなみ、譜代大名筆頭の家格にふさわしい茶道具が多く収集されました。
茶道具には、抹茶を点てて飲むための点前(てまえ)道具をはじめ、掛物(かけもの)や花生(はないけ)、文房具などの飾り道具、椀や酒器などの懐石道具などがあり、その種類は実に多様です。これらは、長い歴史の中で、素材や形、質感などのさまざまな面において工夫が凝らされてきました。道具としての機能性は当然のことながら、いかに茶人たちの美意識を反映し、好みに適うように作るかということが追究されたのです。茶道具は、茶人たちの求めに応じることで、美的な側面においても磨き上げられ、発展を遂げてきたといえるでしょう。
本展では、「茶の湯ってなに?」、「茶道具ってなに?」、「有名茶人“お好み”の道具!」、「教えて!茶道具の使い方」という4つのテーマに沿って、20種余りの茶道具と点前書や茶会記などを展示します。
本展では、夏休みを含むこの時期に合わせ、茶の湯を知らない子どもたちにも分かりやすい解説を添えて茶道具の“いろは”をご紹介します。また、井伊家2代直孝(なおたか)が徳川家康より拝領した「大名物 宮王肩衝茶入(おおめいぶつ みやおうかたつきちゃいれ)」をはじめ、井伊家伝来の茶道具から選りすぐった優品の造形美にあふれた姿をご堪能いただける企画でもあり、子どもだけでなく大人の皆さんも楽しくご覧いただける展示です。