このたび、彦根城博物館で「井伊直政書状 酒井三郎右衛門尉宛」の寄贈を受けました。あわせてお披露目の公開をしますのでお知らせします。
1 公開作品
井伊直政書状 酒井三郎右衛門尉宛
(いいなおまさしょじょう さかいさぶろうえもんのじょうあて)
点 数:1巻
法 量:(縦)16.6cm×(横)82.3cm
制作年代:年未詳(戦国時代)9月28日
※あわせて装幀されている石黒務(いしぐろつとむ)の解説文(後述)も展示
します。
2 史料の寄贈者
中野修身(なかのおさみ)氏(71歳)。なお、母が酒井氏(ただし、江戸時代以降は「酒居」と苗字の字を改めています)の子孫にあたります。
3 公開作品の概要
彦根藩井伊家初代で、徳川家康のもとで活躍した井伊直政(1561~1602)が、酒井三郎右衛門尉に宛てた書状です。井伊氏と酒井氏は婚姻関係のある近しい一族だったと考えられ、江戸時代には井伊家の家臣になっています。
書状では、酒井から手紙や鮭を贈ってもらったことに直政が御礼を述べ、直政の煩いが治ったので下向するという直政自身の近況を伝えています。歴史的な事件と関わるような内容は見られませんが、直政からこのような書状を直接もらっていること自体が、井伊家と酒井氏との親しい関係を示していると言えましょう。
巻子には、明治23年(1890)に井伊直政書状について記した石黒務(1840~1906)の解説文もあわせて装幀されています。石黒務は、旧彦根藩士で、明治時代に地方の官職を勤めたのち、井伊家の近くで活動し、井伊家や彦根藩に関わる史料の収集・考察にも取り組んでいた人物です。石黒は、この解説文で、酒居氏は当初は直政の他の家臣とは違い客分であったため厚い待遇を受けていたこと、また、井伊直政が酒居氏に書状を送ったとしても怪しむことではなく、井伊直政の真蹟であることに疑いないことを述べています。
なお、この史料は旧彦根藩士の歴史研究者中村不能斎(なかむらふのうさい)により明治時代に翻刻されており(「中村不能斎採集文書(なかむらふのうさいさいしゅうもんじょ)」、東京大学史料編纂所所蔵)、以前からその存在は知られていました。今回その原本が発見された形になります。
井伊直政書状は戦国時代の書状の貴重な原本であり、石黒務の解説文も明治時代の歴史研究の活動も窺える史料として高い価値があります。
4 公開期間
令和4年(2022年)10月7日(金)~12月6日(火)
開館時間:午前8時30分~午後5時(ただし入館は午後4時30分まで)
5 会場
彦根城博物館 展示室6(常設展「“ほんもの”との出会い」の会場内)
6 観覧料
一般 500円(450円)
小・中学生 250円(170円) ( )内は30名以上の団体割引料金
*企画展と常設展「“ほんもの”との出会い」ともにご覧いただけます。